2010年11月

山行日:2010.11.28
目的地:バラ尾根
コース:落合・観光釣り場(7:00)~バラ尾根500m付近(7:20)~630m(7:45)~834m峰(8:15)~林道(8:30)~1016m峰(8:50)~1050m峰(9:10)~1070m峰(9:15)~林道(9:20)~尾根上(9:35休)~(10:00)タタラの頭(10:20)~(10:40)橋小屋の頭(10:50)~蕨山(11:20)~(11:50)藤棚山(12:30)~大ヨケの頭(12:50)~大ヨケの頭の下~落合(13:50)


一昨年、タタラの頭で休んでいると、藪の中からワッシワッシと登ってきた男が現れた。頑強そうな人だった。何処から登ってきたのか聞くと、「バラ尾根を登ってきた」と言った。口数の少ない男だった。

昭文社の地図には、バラ尾根が表記されていた。古い地図を見ると、観音岩尾根とでていた。名栗川支流の有間川源流・落合から有間山最高峰・タタラの頭に直接突き上げる尾根だった。標高差は900m弱。
タタラの頭付近は笹薮があるので、登るなら晩秋の乾いている時期がいいと思った。少ない雪が降ったら
濡れてイヤだから。

数日、晴れていたので、バラ尾根に向かった。

悪名高い広河原・逆川林道が二分する落合橋のすぐ先に小道がある。まずはこれを辿る。バラ尾根に乗るには絶好の小道だ。

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バラ尾根への取り付き道。

小道は、一度屈曲しバラ尾根の先端に達した。歩きやすい所はないかと、尾根を廻り込むと、なんと木段があった。

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第一の取り付き道から第二の取り付き道へ。まさか、山頂まで道があるとは思えないが・・・。

第二の取り付き道は北東面の山腹を登るように着いていた。やがて、バラ尾根上へ向きを変え、おあつらい向きに標高500mでバラ尾根上に出た。道は尾根を乗り越してついていた。ここで磁石をセットし藪に突入した。予想以上に急で、木に掴まりながら登った。足場も柔らかく悪い。550mで傾斜が緩むが
、すぐに急斜面となる。しかし、笹薮などは無く、歩きやすくなった。道は全く無い。
なだらかな630m峰で一息ついていると、カウベルのような音が小さく聞こえた。ソリを引くトナカイのベルのような感じで、急速に近づいてきた。上を見ると、茶色い猟犬らしき犬がこちらに走って来るのが見えた。犬は、複数いる。犬の荒い鼻息が聞こえてきた。おいらは、一瞬たじろいだ。が、度胸を決め、厳しく犬達をにらみ付けた。犬の速度は鈍った。先頭の一匹が立ち止まった。舌を出し、激しくヨダレをたらしている。あいらの足の臭いをカイだ。そして、こちら振り返りつつバラ尾根を下って行った。残りの3頭も後に続いた。なんだ、あの犬達は。

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834m峰付近に猟銃をたずさえた、猟師がいた。犬は猟師のものだった。すると、再び犬が尾根を駆け上がってきた。犬は猟師に擦り寄った。

834mから緩く好ましい雑木林を進むと、林道に出た。そして、またしても犬が現れた。おいらの姿を確認すると、再び山を下って行った。
林道に腰壁があった。左に階段があり簡単に登れた。1016m峰は簡単に登れた。ここより尾根が何回か屈曲するようなので地図とコンパスを手に慎重に歩いた。1050m峰の先は杉林でここを右へ直角の感じで曲がった。小さく降ると、意外に急な登り斜面となる。左手に踏み跡とも思える跡があったが、慎重を期し、正面の高みを目指した。高みに上りつき、今度は左に屈曲。左前方に林道が見え、山腹を降る。
林道を突っ切って尾根を辿りたいところだが、急で登れない。林道を右に行き様子を窺がうが、登りずらそう。左に行っても同じ。腰壁は肩の高さくらいなので、リュックを腰壁に置き、ヨッコイショと云った感じで山腹に取り付いた。が、いきなりイバラの急斜面。運の悪いことに、錆び付いた有刺鉄線まで現れた。なんとかこれらカワシ、歩きずらい山腹から尾根に復帰した。すぐに杉林となり、足元は安定する。右手から踏み跡が上がってきていた。どうやら第二の林道は右手に大分進んだところから踏み跡があるようだ。
やがて、右から一段高い尾根型が見えてくる。磁石の方向とは違うが、一旦そちらの尾根に上がってみた。すると、やや明瞭な踏み跡があった。気を良くしたのだが、杉林が消え、雑木林となったところで、ドッカーンと笹薮が現れた。

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行く手を藪がふさぐ。ショック!

廻りを見廻し、右手に藪を回避。山腹を歩くも、尾根から離れてしまい。仕方なく徐々に尾根に戻る。尾根に戻ってみると、笹薮の中に鮮明な踏み跡があり、苦も無く歩ける。助かった。拍子抜けする間もなく、タタラの頭に着いてしまった。

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タタラの頭の御札の脇からバラ尾根は派生している。

タタラの頭の御札は、日光山中で見たものと酷似していた。もっとも、定格的に書かれているのだろうから、全国的に似ているのだろう。肝心の寺の名前が読み取れなかった。

タバコを吹かし、樹間から、先週行った大平山などを眺める。おいらのアイドル三つドッケは大平山に比べると、なんと貧弱なことか。

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大平山。一度行くと、判別しやすい。

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有間山の尾根は、バラ尾根と異なり、青い笹が清楚に茂っていた。種類が違うようだ。呑気に頭峰を越える。


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主脈の橋小屋の頭に到着。


橋小屋の頭には、オッサンがいた。どこから来たのか聞かれたので、「バラ尾根から」と答えた。地図を出してきたので、落合からのルートを簡単に説明した。すると、鳥首峠方面から軽装・薄着の女性が現れた。オッサンは「アレー、先週も会いましたよね」と言っていた。二人とも良く山に登っているようだ。
所で、女性のルートを聞いて驚いた。朝、芦ヶ久保を出発。二子山・武川岳・鳥首峠を経由してこの時間(11:00前)に橋小屋に到着していた。さらに、タタラ・日向沢の峰・棒の折れに廻り名栗川に降り、竹寺・子の権現へ登り返し、吾野へ下るという。ブッタマゲタ。16:00には着くだろうとの事。凄い方はいらっしゃるものです。

橋小屋の頭の急斜面を降っていると、次々に人々が登ってきた。蕨山展望所は人で一杯だったので通過。藤棚山の湿ったベンチで昼飯を食った。

大ヨケの頭から落合に下りたいのだが、この下は林道の絶壁で降れないので、5分ほどさらに尾根を下り、頃合いを見て林道に強引に下った。
林道を蕨山方向に戻り、大ヨケの頭の真下から、落合への登山道へ入った。

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今日登った有間山。

この道は超急斜面である。落合までのコースタイムは30分とあるが、とてもその時間では降れない。木にしがみつきながら降る。幸い密林なので、掴むものに苦労はしない。と同時にすばらしい紅葉を見ることができた。

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落合へ下山路。

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有間小屋跡の上の方。


陽の高いうちに、落合着。



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有間ダムのモミジを愛でながら、帰途に着いた。

だいぶ昔の話。20代前半の頃。

4月の末だったと思う。一人で徳沢から蝶ヶ岳へ向かった。長塀尾根に取り付くとすぐに雪が現れた。残雪とは云え、雪山歩きには慣れていなかったので多少緊張していたと思う。先行者は居ない。トレースも見当たらなかった。当然道は出ていないので、尾根型をたどった。ただ、雪は良く締まり、ツボ足でも楽に歩けた。曇天で薄暗い森を歩き続けた。

傾斜が緩み、尾根幅が広くなった。密林であいかわらず景色も無い。ふと気がつくと、雪面に足跡を見つけた。これで一安心。足跡を追った。5分とたたずに、足跡は二人分になった。おかしいなと思った。そして、見覚えのある木々が。足跡に自分の靴を入れてみた。ピタリと一致した。ゴム底の形も同じ。瞬間、ゾッとした。

そして、「リングワンデリング」と言う言葉を思い出した。あせった。とりあえず、少しでも高いところへ行かなければと思った。廻りを良く見て進んだ。足跡はすぐに右側へ遠ざかった。

左前方に槍の穂先が見えた。ここでようやく地図と磁石を出した。今思えば遅きに失していた。地図上でシルバーコンパスの回転盤を廻し、槍と長塀尾根を結んだ。おおよその位置が判った。かなり上まで来ていることが判明した。そして、磁石をセットし、方向を定め進んだ。

森が切れ、蝶ヶ岳ヒュッテの赤い屋根が見えた。助かったと思った。主稜線上に雪は殆どなかった。槍・穂高連峰を始めて間近に見て圧倒された。

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幸い、その後リングワンデリングにはまらずにいる。
雪山や藪山で磁石を使わず歩き出すのは致命傷になる危険がある。
藪山や雪山で右側に向かってしまう癖があることに気がついたのは最近の事である。なおさら、磁石に頼らなければ歩けないのである。

山の怖い話と言っても、怪談話しではない。
少しだけ怖かった山の体験を記憶がなくなる前に記録しておこうと思った。
たいした話ではない。

雪酔いは、3回体験している。


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一の越付近から室堂のテント場に至る谷。一の越のすぐ下で雪酔いをした。



はじめは、蔵王スキー場ザンゲ坂の下の緩斜面。
強風・向かい風・吹雪・超低温・緩斜面。息をすることも苦しかった。緩斜面をクロウチングでやり過ごそうとしたしていた。そのうち、自分が進んでいるのか、停まっているのか判らなくなった。目が廻り、転倒した。転倒したときの感触は、超低速の滑降だったように感じた。起き上がるのもままならなかった。何とか起き上がり、カラサワの壁に入ると何の事は無く滑る事ができた。

二度目は、志賀高原横手山スキー場の下部。
大雪が降る中、渋峠で無重力の深雪滑降を楽しんでいたが、余りの低温・強風に耐えかね横手山スキー場に退避。横手山スキー場から熊の湯に向かった。緩斜面に差し掛かった所で自分が進んでいるのか、停まっているのか判らなくなった。何がなんだかわからなくなった。グルグルと手を回し転倒した。転倒時、さらに斜面から小さく落下。ボキッと音がした。ゴーグルをはずして周りを見廻すと車道に転落していた。ボキッという音は、スキーからビンディングが引き千切られる音だった。
状況は、蔵王と酷似。強風・向かい風・吹雪・超低温・緩斜面。息をするのも苦しかった時。

三度目は、立山。一の越から室堂への滑降時。
前夜、岡山から高速を寝ずに走り、11時に室堂で東京の仲間と落合う。ロッヂ立山連峰に荷を預け、足慣らしに一の越に向かった。夏道ルートは使わず、谷底を登りつめた。意外にもシールが効かず苦労して登った。天候は晴れ。純白の斜面に雲の陰が次々に行き交っていた。
チョロイものと意気揚々と滑り出すも、自分が進んでいるのか、停まっているのか判らなくなった。危険を感じ自ら転倒した。ゴーグルを取ると、目の前にキョトンとした登山者が立っていた。谷の中央部を滑るつもりが、左手の夏道コースの方に大きくぶれていた。コッパズカシイ思いで立ち上がり、斜滑降気味に谷の中央に戻った。
この時は、全くギャップの無い広大で明るい純白の斜面に酔ってしまったようだ。

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雪酔いはスキー滑降時に体験した。
雪酔い発生の共通点は、
  ・緩斜面
  ・なんらかの原因で、視界不良(余りの明るさも含めて)。
であった。
雪酔い時の感じは、海で大波に巻き込まれ水中でグルグル廻っているような感じ。自分の体勢が判らないのである。
体質的に雪酔いしやすいのかもしれない。

山行日:2010.11.21
目的地:谷川岳
コース:西黒尾根入り口(7:30)~鉄塔(7:40)~ラクダの背(9:20)~ザンゲ岩(10:20)~トマの耳(10:50)~熊穴沢避難小屋(休)~天神平(13:10)


仕事は4連休。秩父の熊倉山~酉谷山~矢岳を1泊で計画するも、晴れは続かないとの予報に変化した。22日は雨マークも出ている。この時季、雨に降られたら辛いなぁ、と思い、アッサリ計画変更。
白銀の谷川岳を見に日帰り山行となった。

真冬の谷川岳は、チトやばすぎる。おいらの実力では、年内が精一杯。それも新潟に晴れマークが出ているときしかチャンスは無い。11/21は北関東・晴れ時々曇り、新潟・晴れ、の予報だった。

関越道の鉛直線上に赤い満月が浮かんでいた。赤城Pで出すものを出し、焼きソバパンをかじった。下牧から谷川岳が見えた。雪はあるようだ。天気も良さそうだ。モクロミ通りに事は進んでいる。

ロープウェイの駐車場に車を停めた。スキー用のアンコ入りズボンに着替え、大嫌いな革の登山靴を履いた。足を入れた瞬間、また一段ときつくなっている様な気がした。アイゼンをリュックに入れ、ストックを握り出発。
車道を進み、西黒尾根入り口へ。落葉したブナの大木の道をゆっくり登る。
すぐに足の親指が痛くなった。6月頃足の親指の爪がポロリと剥がれた。まるでカニの甲羅のように。昨冬痛めつけられた親指の爪が夏に剥がれ、中から薄く可愛らしい爪が現れたのだ。今では、その爪も元通りの厚みとなっていた。この靴、捨ててやろうかと思ったのだ。

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樹間より谷川岳が見えてきた。雪は思いのほか少ない。純白とは程遠いではないか。

後ろからオッサンが登ってきた。半袖のシャツを着ている。ピッケルをリュックに着けていた。寒くないのかねぇ。半袖とピッケル。こいつに抜かされても仕方ないワイ。

上から巨大ザックを背負った若者達10名近くが元気に降りてきた。上の状態を聞くと「アイゼンでガシガシ歩いてきました。」との事。なるほど、上には雪があるのか。少し嬉しくなった。

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ラクダの背より。ウ~ン、雪が少ないねぇ。アイゼンでガシガシって本当かね。

ラクダの背をやり過ごすと、急な岩場となる。このあたりで雪が凍っているとイヤだなと思っていたが、雪は殆どなし。対岸の天神尾根スキー場にも全く雪は見えなかった。岩場でストックが邪魔になり、リュックにくくりつける。

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氷河痕跡付近。

氷河痕跡からザンゲ岩付近には凍りかかった雪など現れた。アイゼンの跡があった。が、今は多少硬さが緩み、アイゼンは必要ない。雪も多くは無い。それよりも足の親指が痛いのだ。上から半袖ピッケルのオッサンが降りてきた。さすがに上着を羽織っていた。自分の鈍足に愕然とするも、セーターと半袖、ストックとピッケル、身なりからして実力差は歴然としていた。

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多少雪が増えてきたが、問題なし、と言うか、少々ガッカリ。

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肩の広場に着いた。この頃よりガスに巻かれる。

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山頂着。

山頂はガスの中。
ご夫婦らしき方がいるのみ。彼らはオキの耳に行くか行かないかで迷っているようだ。おいらは、タバコを一本吹かせてオサラバ。

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新装なった肩の小屋に鐘がかかっているのを確認。

肩の小屋にかかっている鐘は、北千住駒草山荘(山道具屋)のご主人が谷川連峰の各小屋に寄贈したものである。霧の日などは、和田アキコになり代わりこの鐘を鳴らして頂きたい。北千住駒草山荘は今は無い。天山の寝袋・チロリアンシューズなどは使いつぶした。最後まで残っていたホーローの水筒に昨年穴があいた。30年使用。

鐘を一つ叩いて、おさらば。

足の親指の痛さに耐えかね、予定変更で天神尾根を下ることにする。ちなみに、今履いている革靴は舶来品である。駒草山荘の焼印の入った革靴に憧れを持っていた時季もあったが、買うチャンスを逃していた。買っていれば、まだ現役であったと思う。

肩の広場を少し降りると霧は無くなったが、国境稜線には群馬県側から雲が押し寄せその姿は見えなかった。

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俎グラにガスがかかる。雪の着いた俎グラはとても美しいので、残念だ。。

足の親指が痛く、ギクシャク降る。何人かに抜かれる。熊穴沢避難小屋で昼飯とする。
外に出ると、天気が回復していた。そばにいた陽気なオッサンが、「こんなもんですなぁ。」と言った。
「そうですなぁ。」

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天神平手前より。

泥だらけのズボンでロープウェイに乗り、下山。
時間が早かったので、一の倉沢に寄った。


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一の倉沢に行くと、またも稜線にガスがかかつていた。しかし、ここはガスがかかっていたほうが、より陰鬱に見える。これは、この谷に限ってホメ言葉である。日当たりが悪いのか、ここだけは、いくらか雪が多く見えた。

2010.11.13
秩父大平山・峠の尾根の紅葉

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